تسجيل الدخول侯爵家のティー(テイワズ)は、五人の兄に囲まれ大切に育てられてきた。 しかし、婚約者から突然の婚約破棄。 その日父親から家族の真実が告白される。 「この家には血の繋がらない兄がいる」 その日から始まる兄たちからの熱烈なアプローチ! 家族の絆を信じたい気持ちと、芽生えてしまった新たな感情の間で心が揺れる。 長男*ヘルフィ 銀髪赤目 22歳 「俺様が誰より甘い想いをさせてやる」 二男*ロタ 黒髪青目眼鏡 21歳 「自分があなたを守ります」 三男*エイル 金髪緑目 19歳 画家 「あはは。俺の本気を見せてあげよう」 四男*ルフトクス 茶髪金目 18歳 「おれと一緒に逃げようか?」 五男*フォルティ 紫髪赤目 17歳 「僕があなたをエスコートします」
عرض المزيد*「ティーが襲われただあ!?」 家に着き、テイワズが話さなかった出来事を家族に伝えた御者の首をロタが掴んだ。「何やってたんだ!」「おいやめろ」 苦しい表情で謝る御者の首を掴むロタの肩を、ヘルフィが乱暴に抑えて離す。 その勢いに眼鏡が落ちて、ルフトクスが拾った。「んー、どうしてそうなったわけ?」 ルフトクスから受け取った眼鏡をロタがかけなおす後から、フォルティが現れる。「ええ。一体どうして……なんでそうなったか気になりますね」「あ、それは……」 テイワズの説明よりも、御者の申開きが先だと、兄四人は御者を問いただす。 銀。黒。茶。紫。四つの髪の色は並ぶと壮観だ。 赤。青。金。そして赤。三色の八つの瞳は強い光だろう。 突然のことだったと、御者は改めて状況を説明した。一通り聞いてから、ルフトクスが唸る。「うーん、どうしてティーが狙われたんだろうね」「世界一可愛いからに決まってるでしょう」 答えたのはフォルティだ。「それはまあ、そうなんだけど」 ルフトクスが頷いて。「あなたたち、ふざけないでください。──まあ、間違ってないですけどね」 ロタも諭しながら頷いた。「あはは……」 まあいつものことだ──今まで通りのことだと兄たちの様子に苦笑する。「物盗りでしょうか……いや、金品目的としてもティーは本しか持ってなかったわけでしょう?」「おれたちに恨みがあったとかー?」「無差別なのか、そうじゃないかすらわかりませんからね……」 ロタ、ルフトクス、フォルティが顔を合わせて唸り合う。「僕ががずっと傍についてるべきでしたね……」「おれとのーんびり過ごしてればよかったねぇ」「自分がいればそんなこと許しませんでした」 兄三人の吐く重たい息と言葉が重なった。(私の名前が呼ばれたと──言うべきなのか) その横で、テイワズはこっそりとヘルフィを見た。(なぜ知られたのかはわからないけれど──狙われたのは私……私の力。それ以外に理由がない) ヘルフィと目が合った。頷いたわけではないけれど、お互いわかり合ってることが、視線だけでわかった。(風の力が狙われたと思うのね) ヘルフィが三人に視線を戻した。「……とにかくだ、俺様たちの妹が狙われたのは間違いねぇ」 三男がヘルフィに視線を渡した。「今後もあるかもしれねぇ。……俺様がしばら
「ティー。今日も図書館行くのー?」 ふわ、とあくびをしたルフトクスに釣られそうだった。うん、と頷くとロタが眼鏡を押し上げた。「図書館ですか。いいですね」「僕も行きましょうか?」 フォルティがテイワズに聞くと「あー、抜け駆けー」とルフトクスが指差して、下の兄二人の会話が始まる。 それを横目にロタがテイワズに紅茶のおかわりを淹れる。「図書館であれば女性一人でも安心ですしね、変な輩もいないしいいでしょう」 そうですね、とテイワズが頷いたところで、眠そうな顔をしたヘルフィが入ってきた。「おー……」 後ろ手で髪をかくヘルフィに四人はそれぞれ朝の挨拶をする。「ヘルフィ、早く支度してください」 ロタが紅茶を渡して言うと、おう、と返事を一つ。それから砂糖を入れながらテイワズに言った。「あんま出かけんじゃねぇぞ」「え? なにー、兄さんったら過保護ー」 からかったのはルフトクスだ。「一体どうしちゃったのー? 急にそんなこと言うなんて」「……別に急でもねぇだろ」 うっせぇなあ、と言わんばかりの顔に、はいはいとルフトクスが流した。 誰も飲めないほど甘ったるい紅茶を飲むヘルフィにテイワズは笑いかける。「大丈夫ですよ。図書館には親切な方しかいませんから」 今日、赤い髪の男性に会ったらお礼を言おう。 そう決めて、兄たちを見送って、テイワズは昨日借りた本を持って図書館に向かった。「やあ。昨日の本はどうだった?」 かけられた声に驚いて、危うく本を落としそうになった。「昨日の」 赤髪の男性だった。紫色の瞳を人が良さそうに細めて、相変わらず控えめだが質の良さそうな服を着ている。「ありがとうございました。おっしゃる通りでした」 テイワズは微笑みながら答える。「ああよかった」 丁寧な物腰と言葉遣いに、ある程度立場のある人なんだろうな、とテイワズは推測する。「珍しいね。魔術の古にまつわる本を読むなんて──外に出てみるものだ。同じ物好きに会えるなんてね」 物好きなんてひとまとめにされた。 言葉に引っかかるものがあるとはいえ余計なことは言うまい。テイワズは薄く笑う。「もし他にも気になった本があったら言ってよ。話ができると嬉しいんだ」「ありがとうございます」 言葉はそれだけに留めた。社交辞令だろうし、社交の付き合いは今は控えたい気分だ。 淑女
(そうして人々は自然の力の下に繁栄した。日々の糧を喜びとし日常を営んだ……) 本を閉じて、ふう、とテイワズは息を吐く。 あれからフォルティに教えてもらい、本をスラスラ読むことができた。 頻出するその言葉に、フォルティが首を傾げていた。「火、水、大地……それぞれの魔術の要素、力のことをまとめて自然の力と読んでるんでしょうか?」 自然の力。すべてを統べる力。「自然の力ですべてを治め……って、ことはまさか、三大要素をすべて持っているっていうことですかね……?」 ううむ、と唸ったフォルティはテイワズよりも深く思案しているようだった。「自然の力を持つ王が統治する世は太平な世として栄えていった……と、ふーむ」 こっちの方がわかりやすいですね、とフォルティが叩いたのは赤髪の男性に勧められた方の本だった。「しかし、なんで建国にまつわる古代の話や魔術の創生の本なんて読んでるんです?」「ちょ、ちょっと興味があって……」「ふうん。そうなんですか」 テイワズの言葉に、フォルティは引っかかった様子もなく頷いた。「あの一緒に観に行った劇もそうでしたが、やっぱりこういった不作の年はみんな明るい夢のある話が読みたくなるんですね」 ──そう、治安のよかったこの街で、しばしば物盗りが起こるようになったのはひとえに不作のせいだった。 天候不順による不作。人々はそれを王のせいにした。 領主が魔術を使うことにより、大雨時にも災害を防ぎ、害虫の発生も延焼させ対策し、地崩れも塞ぐことができるが──全ての作物を守れるには至らない。 日照りや豪雨は防げない。 大地の力は枯れた草木を甦らせるには至らない。 周りに天才と呼ばれ魔術の能力の高いルフトクスの大地の力でさえ、花一輪咲かせるのが精一杯。本来草木の成長までは操ることができない。 同じ大地の魔術を使うエイルでさえ、それをできない。とはいえエイルは地を揺らし割ることができ──破壊力という面では兄弟一番であった。「一人で複数の魔術要素を持つとか、第四の元素があったとか……」 フォルティは読んだ本を撫で、観た劇を思い出し、テイワズに呟いた。「人は夢を見るのが好きですね」 フォルティとの会話はそれで終わり、戻ってきた兄たちと食事をして寝支度を整え、そして寝室で一人で過ごす今に至る。 そうだ、夢みたいなできごとだった。目
フォルティと足を運んだ劇場がある広場の周辺に目的の場所もある。歩いて遠いわけではないが、出かけるならくれぐれも馬車に乗らせるようにと御者は言われていたらしい。──ヘルフィに。 馬車が止まって、開かれた扉に礼を言いながら降りた。「では、こちらで待っておりますので」 御者に会釈をして、テイワズは長い階段の先にあるその建物に入る。 ムスペル国立図書館。 この国一番の蔵書量を誇る図書館だ。 目的は魔術の要素、魔力について──自身に起きた出来事について。 図書館に入り魔術の本が置いてある一画へ進む。 魔力がある者は貴族ばかりで、貴族は魔術の学校に通うことになっているので、わざわざ魔術の本を探しに図書館に来るものは少ない。 知は財産とされており、貴族の多くは資産でありコレクションとしても多くの本を所有しているから、そうそう足を運びに来る必要もない。 庶民の姿は多く、女性も多い。館内は立場や権力と画された世界。広く開けられた間口の中は知識への探究。(……探すべきは、魔術の種類? 学術書?) 自分の背丈以上の本棚を見ながら、どの本を開くべきか思案する。 いつか自分は嫁ぐ。嫁ぐ相手は家のことを考えると、確実に貴族だろう。ならば魔術を使えるだろう。そう思って、魔術が使えないテイワズなりに勉強はしていた。 しかしそれは学舎で得られるほどのものではない。本をなぞっただけ。表面上の会話がなぞれるだけ。 火、水、大地の魔術。三つの魔力。有用な使い方やその魔術の行使により起きた出来事などはあった。 魔術は古くからあったもので、それ故に当たり前に生活に密着していた。それ故か魔術の歴史という文献は少ない。あっても、貴族に魔術師が多い理由、なんて程度の項目だ。(探してるのはそういうものじゃない) 例えば。 そう──例えば。(フォルティお兄様と観た劇のように) 第四の魔術要素なんて。 そんな言葉が書かれた学術書や歴史書を探してみるが、そんなお伽話の記載はない。 そうお伽話だと思っていた。昨日までは。
* 体が大きく揺れた気がして、テイワズは目を開けた。「起きたかよ」「お兄様」「おう」 声は真横からだった。身を預けるようにヘルフィに寄りかかっていたようだった。自分の頭がヘルフィの肩に乗っていたことを理解して、慌ててテイワズは身の回りを見渡す。 馬車の中にいた。倒れた自分を運び乗せてくれたのだろう。この行き先は、家以外にないだろう。「……魔術はそれなりに負担がかかる。何年か経ちゃ慣れるが、反動の大きさは……そりゃ……まあ、個人差だが」 突然話出されて、何を言ってるのかわからなかった。それが自分のための説明だと理解するのに数秒かかった。「魔力が強いほど反動も大きいってのが一
公の場での婚約破棄。 それは顔に泥を塗る行為で、顔を上げられなくなるなどの屈辱だ。 あの場でテイワズがダグ・ブランドスに言われた言葉は、社交界でのテイワズの看板に泥を塗った行為だ。 きっと以後、テイワズに婚約を持ちかける話は来ない。 来たとしてそれは、ブランドス家の豊かな経済状況計算と兄たちの魔術能力を求めるという打算でなければ、よほどの物好きぐらいだ。 女性として磨くための手習を。 貴族として繋がるためのサロンを。 今まで行っていた社交界に繋がるその場所に、もうテイワズは行けない。 もとより女性のそれはすべてより良い婚姻のためで。それは今となっては──。 (来ないでと
「この馬鹿!」 ロタの声に、ルフトクスが顔を顰める。「うるさいなあ。……どうせ兄さんだって同じようなこと言ったでしょー?」「くっ……! オレとお前の話は別だ!」 ロタが自分のことをオレというときは余裕がない時だと、この家の者なら誰もが知っていた。 テイワズが家から逃げ出した直後、ヘルフィとロタは走り去る馬車に驚いた。その場に立ち尽くすルフトクスになんとなく事態を把握するが、午後の仕事も控えていたため、話すことができなかった。 夕方やっと、代わりの馬車で向かった仕事をこなして、兄弟四人で話していた。 戻ってきた御者に話を聞いてきたフォルティが部屋の中に入る。「エイル兄様に会いに
「家を出るって本当ですか?」 家の庭に、お気に入りの場所があるのを知っていた。 庭師が丹念に育てた花畑の中で、男性にしては長めの金髪が大地に広がっている。「ん? ああ、聞いたの?」 緑の目は若草と同じ色。その色にテイワズを映して、エイル(三男)は頷いた。「本当だよ」「どうして」 テイワズの質問に、笑って答える。太陽の光を惜しげなく浴びる金髪が揺れて光った。「どうして……って、はは。もう学校も終わるし、当たり前でしょ」 エイルは魔術学校を卒業する十八歳で、テイワズは十五歳。そろそろテイワズにも婚約を、と父親が社交の場で言い出した頃だった。「けど、ヘルフィお兄様とロタお兄様は